すべては愛のために -BEYOND BORDERS- | Stairway To Stardom

すべては愛のために -BEYOND BORDERS-



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キャラハン医師役、
クライヴ・オーウェンの魅力が光る。
キングアーサーのアーサー役では、
カリスマ不足というか、
ちょっと男前?なおっさんといった雰囲気の人だから、
騎士物語には向かないと思ったのだけれど。
ニコラス・ケイジに顔や雰囲気が似ているからなのか、
演技派だな、と思った。うまい

主役のアンジェリーナ・ジョリーは、あまりいいところが出ていない、
というか出せない役柄であり、脚本。
彼女自身がカンボジアに傾倒していたり、
難民問題のアピールや解決に積極的だから
その流れでの出演だったかもしれないが、
彼女の女優としてのキャリアという観点からだと、
脚本の選択ミスだろうな。

哀れみ、心配、怒り、不安・・・
そういうのが全編を覆っていて、
登場人物の表情も冴えないシーンばかり。
晴れやかな笑顔や笑いといったものとは無縁。
アンジェリーナの魅力といえば、
男顔負けの強さと、
不思議にもその強さと共存する、匂い立つような色気でしょう?
今作では、彼女の魅力と役柄が噛み合っていないうえに、
悲しんだり悩んだりしっ放しの不景気な顔は、
彼女の新たな魅力にはなり得ない。

残念ながら、少しもハッピーにはなれない作品。
邦題にあるような、「愛」と呼べるようなものは一切登場しない。
原題のとおりに「境界(国境)を越えて」と呼ぶに相応しく、
越えすぎて ただひたすらぐちゃぐちゃ。
国際問題も、家庭の問題も、何も解決できないまま、
感情に任せて右往左往する。
できた子供は、他人の子供。そこんとこも境界なし
内緒で旦那に育てさせます。
こういうのって、よくある話なんですかね?
ほんと、結婚して子供ができたら、
DNA鑑定することをお勧めしますよ。

あまりにわがままで愚かしく、自己中心的な振舞い故に、
you deserve it!”(ざまぁみろ!)と思ってしまった、
心苦しくも、心が痛まない結末。 

内戦や救済組織の抱える問題を指摘するに足りず、
恋愛物語でもない。
エチオピア、カンボジア、チェチェン・・・
どの国際問題も、中途半端に扱われて説明不足だし、
どうしたい、どうすべきといった主張らしきものも見当たらない。

いろんな判断を観客に委(ゆだ)ねすぎ。
クリエイターってこんなんでいいのかな。
観客に甘えすぎじゃないだろうか。
マイケル・ムーア監督の「華氏911」のように、
もっと問題を煮詰めて、詰め込んで、問題提起をしたうえで
観客に判断を委ねる、のならば分かるけれど。

最初は難民の子供に手を差し伸べるので、
そういった人類愛がテーマなのかと思うのよ。
でも途中からは、ただ男が気になって会いたいだけで、
ボランティアを理由に旦那と子供を放置して、
国境を越えて会いに行きます。

初っ端から夫に「個人的に」出させた4万ドルで
エチオピアに援助に出掛けたわけで、
自分で何かを組織するとか、
お金を集めるといった努力をしたわけではない。
それで慈善事業をしたつもりで大きな顔をしてもらっては、
人としてどうかと思ってしまう。

エチオピアでキャラハンに恋をしておきながら、
帰国して早速夫と子作りをする。
いくらも経たないうちに夫と子供を置いて、
国連の職員という立場を利用して
彼に会いにカンボジアに行ったかと思えば、
「夫との愛は冷めた」などと言って彼と子作りをする。
帰国後不倫相手の子供を素知らぬ顔で夫に育てさせておきながら、
またもや夫と子供二人を置いてチェチェンに不倫相手の探索に行くのに、
それも、夫に何の説明もせずに、置き手紙だけで済まそうとする。
他の男の子供を、夫の子供だと偽って育てさせておいてだよ?

「すべては愛のために」ですか。
そういうの、愛って呼ぶんですか?
「愛のため」なら何をしてもいいと思ってるんだな、この脚本家も、監督も。
どう考えても "beyond borders" (境界を越えて)じゃねぇよ。
お前がやってるのは ”boderless”(線引きなんかねぇ)だろうがよ!

極めて利己的な「愛」(??)のために、
周囲の人々に迷惑をかけ、傷つけ、
周囲の人を誰一人として幸せにすることなく、
お前が愛した人すらも幸せにすることができない
ラストで地雷を踏んで粉々になるのが相応しい
あんたには勿体無いくらい華々しい演出だ。

ホント、そういうの「愛」って言わねーから
とんだ茶番だわ。
不毛なドタバタ劇ですわ。

そういやさ、英語だと「」も「」もただ一言、
LOVE”で済んでしまうの、知ってた?
区別がないんだよ。それを指す言葉がないんだから。
日本語って深いね。ってか、なんで英語にはないのかね。
「君のことがちょっと好き」も「あなたを愛してる」も
I LOVE YOU.”で済みますか。
そうですか。
漠然としてるのか、曖昧なのか浅いのか。
外国人に日本人の微妙な心の機微が分からないわけだ。
I LOVE YOU の後すぐ SEX だものな。短絡的。
ま、ある意味大歓迎かもしれないけど♪
この作品、セリフはいっちょまえに「愛」を語るけれど、
状況はどう考えても「恋」止まり。
だから動機や盛り上がり方が不自然なのな。
百歩譲って「すべては恋のために」が関の山ですな。

それから、難民や軍事政権の問題を扱うときに、
子供を登場させるのは間違ってる。
あのさぁ~ 飢餓も政治も、大人の問題じゃーん?
目についた子供を救うのは、根本的な解決にはならないんだってば。
最初のシーンは、すごい偽善だな。今気づいた。

自分たちも食えないくせに、性欲に任せて
じゃんじゃん子供作る大人がいるんだぞ?ありえねぇ。
飢えるの知ってるんだよ?
飢えない訳ないんだよ?
SEXはいいよ。禁欲しろとは言わない。
そんなに気持ちのいいこと他にないものな。
だからって何で飢えるの分かってて産むんだ?
あと何日分の食料しかない、って状況なんだぞ?
それでも産む?
どれだけ頭悪いんだよ。
昔の日本は、食いぶち減らすために泣く泣く
お婆さんを山に捨てに行ったんだぞ!?
本当に・・・
どれだけ頭悪いんだよ!状況をわきまえろ!

それを他国の食料で育てる?甘えすぎてない?
先進国も、援助の仕方間違ってない?
連中の教育も考え方もおかしいんだからさ。
数百年前の日本と同じ考え方もできないんだよ?
(姥(うば)捨て山のこと)
みんなもさ、あんな難民キャンプに乳幼児がゴロゴロしてるの、
おかしいと思わない?
神戸や新潟の地震の避難キャンプで、
日本中や世界中から救援物資が届いて、
(日本は自分のところでやれるから、外国の助けはいらないけどね)
たくさんのボランティアが頑張っているような状況で、
あっちこっち妊婦だらけで、出産ラッシュだったらどう思うよ?
そんな状況で、てめぇは生産的なことを何もしていないのに、
SEXだけは好き放題で、中出ししまくってんじゃねぇ
と思うわ、俺は。

何か違うとは思わない?

こういった問題を、
金と食料で解決しようとした主人公の行動は浅はかだよな。
まぁ、短期的に最も効果があるし、
人道的にやらざるを得ないんだろうけど、
先進国が人道という大義名分の下に、
自分で自分の首を絞めてるわな。
全国の優秀な美容部員の皆さんは知っていますよね?
対症療法よりも根治療法のほうが大事ですよね~!

飢餓の問題を、
本来地球上で起こり得る自然現象として捉えて放置したら、
飢え苦しむ人たちは全滅して、
苦しむ人が誰もいなくなって問題は氷解するわけよ。
解決せずとも、問題自体がなくなるわけよ。
数十、数百年前ならそれで終わったこと。
そうやって滅んだ文明も数限りないのだから。

それほど大きな、
人類や民族の衰勢に関わるくらいの大問題なのだから、
それに関わるのであれば、
ちょっと物を持っていくといった安易な手法ではダメで、
相当高度な段取りや手法、技術が必要だということ。
少なくとも、未だに問題が解決していないということは、
先進諸国が数十年にも渡ってやってきたやり方が適切ではなかった、
ということを端的に表しているでしょうに。
詮無いことだ。

もちろん、教育問題の改善や、
コンドームを配布して人口抑制しようとしているのも知ってる。
でも、宗教上の理由から女性に教育を受けさせないとか、
コンドームを渡しても使わないなどの問題があるんでしょう?
そういうところにさ、微塵も言及できてないのよね。
少なくとも飢餓や内戦をテーマのひとつとして利用した、
2003年の映画にも関わらず、ね。
浅い。

子供問題の続き。
ヒトラーや金正日と同じく、(概して政治家はそうであるが)
彼らのプロパガンダ(主義や思想の宣伝)の為に
子供を登場させ、仲良くし、尊敬させる印象を与えるのが
問題のすり替えだということは周知でしょう?
これをね、ユニセフの募金のCMなんかと同様に、
この作品もその手法を逆手に取ってるんだな。
カンボジアで子供に手榴弾を持たせるシーンなんて、
その最たるもの。
観客が作品から受ける、それまでの自然な感情の流れとは違って、
子供が危険に晒されているシーンを目にすると、
「かわいそう」とか「非道だ」といった感情が突如沸き起こるんです。
俺もまんまと騙されたので、気づいたこと。
何かしら作品の描写が素晴らしい、というのではなく、
誰もが持つ慈悲や人類愛というか、
本能的な反応を利用した表現方法なので、
これは映画の表現として卑怯なやり方だな、と。
汚ねぇぞ、オッサン(←監督)
(でも、「マスク・オブ・ゾロ」もこの人なんだよな。えらい違いだ)

何を表現したかったのか不明瞭な一枚。
取り上げた題材は悪くはないが、全て扱いが中途半端。
何の意図も成功していない感がある。

お?
キャッチコピーは
「愛」と「命」を描く感動巨編
だって。

へぇ・・・・・・・・・。(1へぇ)
良く言えたもんだ。

「すべては愛のために」なんて邦題を考えた人も、
キャッチコピーを考えた人も、立派な詐欺師になれそう。
お仕事とはいえ、俺なら心苦しいだろうな。

C をあげましょう。

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